拝啓、ばあちゃん【短編】
それから俺とばあちゃんは、会わなかった一年の時間を埋めるように、沢山の話をした。


ばあちゃんはもともと心臓が弱かったが、あの後入院した事。


そこで体重が10kgほど落ちた事。


今も発作に苦しめられているという事。


最近は折り紙にはまっている事。


俺の事を心配していた事。


「骨と皮だけになっちゃった…」


そう言って自分の腕を擦るばあちゃんを見ていると、胸が締め付けられた。


でも昔と同じ、暖かい時間がそこには流れていたから。


俺はすっかり安心して、「また来るわ」と言い残し、ばあちゃんの元を離れた。




「ちょっと待って」


そんな俺を呼び止めたのは、渋い顔をしたおばさんだった。


「ちょっと2階まで来て」


そう言うなり階段をスタスタ登っていくおばさんの背中を見つめる。


今度は何を言われるんだ?


でももう、俺はおばさんの言いなりにはならない。


ここへ来るなとか、ばあちゃんに会うなとか、そんな事を聞く気はさらさらない。


そう決意しながら、2階へと続く階段にゆっくりと足を進めた。


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