拝啓、ばあちゃん【短編】

4

「近鉄八尾〜、お降りの方は…」


仕事明けの眠たさも手伝ってついウトウトとし、あの頃の事を思い出しながら電車に揺られていた俺は、車内に響くアナウンスにハッと立ち上がり、数人が降りようとする後に慌てて続いた。


改札を抜けて一歩外へ足を踏み出すと、そこには懐かしい景色が広がっていた。


六年ぶりになるのか。


ふいに胸の辺りが締め付けられる。


時間は十分にある。


あの場所へ行こう。


俺はゆっくりと歩き出した。


数十分ほど歩くと、駅前の賑やかさは消え、住宅街ののどかな休日の時間が流れている。


次の通りを右に曲がり、大通りを突っ切ると、あの場所に辿り着く。


また胸が締め付けられる。


俺は右手で胸の辺りのシャツをギュッと握りしめた。


まもなくして、歩き続けていた俺の目の前に、見覚えのある風景が広がる。


幅10mほどで、流れもさほど早くない、小さな小さな川。


俺は河川敷におり、グルリと辺りを見渡した。


何も変わっていない、あの頃と。


川の水に太陽の光が反射している。


俺は目をすぼめながら、ゆっくりと流れる濁った水を、ボーッと眺めていた。


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