拝啓、ばあちゃん【短編】
パタン…


真っ先に目に入ったのは、リビングのテーブルで両手を枕にして寝ている親父の姿だった。


俺のたてた物音に気付いて頭を上げた親父が、小さく首を横に振って呟く。


「心配なのは分かるが、お前ももう休みなさい」、と。


何なんだよ、自分の親だろう?


心配じゃないのかよ?


俺は無言で親父を睨みつけると、自分の部屋の扉を乱暴に閉めた。


でも、本当は分かってたんだ。


テーブルの上の灰皿が、煙草で山積みになっていた事も。


いつもは厳格な表情しか見せなかった親父が、ひどく疲れた顔をしていた事も。


親父は親父なりに、とてもばあちゃんを心配していた事を。


俺はベッドの上にあがり、窓の外を眺めた。


空には綺麗な三日月が浮かんでいた。


ばあちゃんは…


今、この三日月を見ているのだろうか?


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