拝啓、ばあちゃん【短編】
姿は見えないけれど、爽やかなスズメのさえずりが聞こえる。


濁っているくせに、朝日を反射した水面はキラキラと光っている。


数人の警官達が、バタバタと慌ただしく動いていた。


早朝にかかってきた電話は、おじさんからだった。


「近所の川べりから、ばあちゃんの乳母車が見つかった」、と。


慌ててその場所に駆け付け、ちょうど到着した俺達の目の前で…


パンパンに膨れあがったばあちゃんの体が、川の中から引きあげられた。


親父とおじさんはそこへ駆け寄った。


おばさんはヘナヘナとその場に倒れこんだ。


俺と従兄妹は、ただただ呆然と立ち尽くすだけだった。


正直…


変わり果てたばあちゃんの姿に、俺は怖くて身動きすら出来なかった。


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