拝啓、ばあちゃん【短編】

7

七回忌を終え、俺はまたあの川辺に戻って来ていた。


緩やかに流れる水面を眺めながら、どうやったらこんな場所で死ぬ事が出来るんだ、なんて考えた。


もしも、自分の記憶が曖昧になっていったら。


もしも、大切な人でさえ思い出せなくなっていったら。


もしも、何をしても周りに迷惑をかけるだけの存在になっていったら。


その時、俺は何を思うのだろう。


未だに釈然としない、あの日の出来事。


でも、月日は流れ、俺はあの頃よりも遥かにばあちゃんの事を忘れていった。


何だかんだで、人間は忘れる事が出来るように作られているんだ。


それでも…


あの頃、好きな気持ちとは裏腹に、少しだけばあちゃんを鬱陶しく思った事。


病気、そう分かってはいても、ばあちゃんを責めてしまいたい気持ちがあった事。


そんな当時を思い出しながら、やっぱり苦しくなる胸の奥を押し潰すように、俺はYシャツの胸の部分をギュッと握り締めた。


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