永遠に。
「あのねえ、私は別にエンジョイとかしなくていーんだから!」

「馬鹿、中学高校は一番楽しんでおかなきゃ駄目よ」

「そうよ和子。アタシなんて中学の頃ずっと引越しだったから部活にだって入れなかったのよ。しかもアンタだって中二なんだから早く友達も彼氏もつくんなきゃ駄目よ」

いつの間にかいた姉も、携帯をいじりながらお母さんとギャアギャア言う。
私が納得のいかないような顔をしていると、

「あ!お父さんは!?」

と姉が思い出したように言う。

「もしかしてまだ起きてないの!?」

「嘘!もう会社行ったのかと思ってた!」

お母さんそれは無いよ・・・。


ひとまず寝室の扉を開けて中を確認してみるお母さん。
そして中を確認するとニッコリと笑って部屋の中へ消えた。

家の中で地鳴りが起きたのはそのあとすぐ。
そして数秒後、顔に痣を沢山作ったお父さんと、その後ろで物凄い形相をしたお母さんがいた。

「お父さん、今朝のご飯用意してなかったから冷凍パンでいい?」

流石我が姉。こういう時にだけよく機転が回る。

お父さんも余裕が無いのか(まあ初日から遅刻は免れたいよね・・・)いそいそと準備をしながら「ああッ頼む!」と返事をした。

姉は笑って頷くと冷蔵庫の中にあった冷凍パンを取り出し、そのまま皿の上にのっけた。
カチン、とパンと皿のぶつかった音がした。

・・・まさかアレを食べるのか、お父さん。

姉は氷の塊みたいなパンが乗っている皿の横に午後ティーのペットボトルと苺ジャムを無造作に置いていた。

あんな切ない朝食を見たのはお父さんが失業20回目を迎えた時以来だ。

お父さんはその朝食(と言えるのか?)を見て一瞬固まったが、黙って氷を食べ始めた。
時々涙を流す自分の父親を可哀想に思えた。
点々と残る痣は、さらにその場を演出させてくれた。


「そうだお父さん、急いでてもヒロのお線香はちゃんとあげてよね」

私がまだガチガチパンを悲しげに頬張るお父さんを見て言う。
お父さんは「当たり前だろ」と言うように頷く。

そしてやっと食べ終わり、皿を片付けて家族皆で仏壇の前に座る。


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