色あせた花
私にはお母さんがいないの。
私とお父さんの2人暮らし。
私は、お母さんの
顔も
声も
…………覚えてない。
だって、お母さんは
お母さんは…………
私か生まれて
すぐ死んじゃったから。
写真とかでは見たことあるよ?
すごく美人だった。
すごく優しそうだったよ?
もし、私が
この人……お母さんに育てられてたら、
私は
もっと明るくて
皆から愛されてて
もっと明るい人生を送ってたんじゃないか、
って思うくらい、いい人そうだった。
多分………いや、絶対に
いい人って
私は信じてる。
でも、
私のせいで死んじゃったの。
私なんか生まなきゃ………。
お父さんはショックで
毎日、お酒ばかり。
私なんか、ただの同居人みたいな。
会話なんて
した覚えがない。
ただ唯一、覚えてるのは
まだ小さかった私の誕生日に、私が
『プレゼントわ?』
って聞いたら
『…何言ってんだ。
今日はお母さんが死んだ日だぞ。』
って言われた。
その時、わかったんだ。
私の誕生日は
お母さんの命日。
だから喜んじゃいけない、
祝っちゃいけないんだ、
って。
だから当然、
誕生日なんか祝った事なんかない。
私の一歳の誕生日は
お母さんが死んで一年目。
私の十歳の誕生日は
お母さんが死んで十年目。
私がお母さんを殺したんだ、
って意識が
歳を重ねるたびに
だんだんと強くなって……。
その罪を償おうと
私は人生を楽しまないようにした。
私のせいで死んだのに
私が普通に
生きてちゃダメなんだよ。