色あせた花
「あっ、あのっ今、救急車呼びましたんで……。
そのっ、す、すいませんで、でしたっ。」
ある男性が私に慌てながら言ってきた。
きっと私達を引いてしまった運転手だろう。
でも、私はそんな言葉なんか、耳に入らず、
いや、入る訳がない。
愛しい愛しい
世界で一番愛する貴方が
私の目の前で倒れているのだから。
陵はピクリとも動かない。
「陵?ねぇ、陵……?
返事してよ……。」
何とも言わない陵。
いつもなら
「なぁに?」
って言ってくれるのに。
「陵……?
これからも、私を守ってくれるんじゃないの?
私を抱きしめてくれるんじゃないの?
私の誕生日、祝ってくれるんじゃないの?」
私は、返ってくるはずのない返事を待った。
でも、私は陵に問いつづけた。
「これからも、パフェ、一緒に食べようよ。
プリクラも撮ろうよ。
………私を…最後まで送って……家まで、ちゃんと送ってよぉ………。」
私は、泣き崩れた。
しばらくすると救急車が来た。