色あせた花
ガラガラ……
「しつれーします・・・。」
そこには、陵が静かに眠っていた。
ふと、看護士の言葉を思い出す。
『いつ目が覚めるか、わかりませんし。』
ってことは・・・
覚めないかもしれない……?
悪い妄想が、頭をよぎる。
私は、ベッドの隣にあるイスに座った。
「陵……。
目ぇ…覚めてよ……。」
また涙が溢れた。
「も・・・もう、やだよぉ……。
なんで……?
りょー・・・?
陵ぉぉぉ・・・・・?」
私は、陵の手を握った。
「ありがとうって
いっぱい言おうと思ってたのに・・・。」
強く手を握った。
でも、
握り返してくれない……。
「車に引かれる前、
私が言いかけた言葉、何だと思う?」
涙は止まらない。
「ちゃんと言おうと思ったんだよ?
まだ言ってなかったから…。
【陵が好き】って……。」
陵は目を閉じたまま。
「好きだよ、陵……?
大好き・・・陵・・・・・。
陵が好き、大好き……。
……愛してるよ。」
全く動かない陵。
「なのに・・なのに……
なんで……?なんでなの……?
なんで…私の誕生日には……
大切な人が失われてくの・・・?」
ピクリ。
陵の手が少し動いた。
「!!!
陵!?
陵!?陵!!??」
私は一生懸命、呼んだ。
「おっ、お医者さん呼んでくるっ!!!!」
私がイスから立ち上がった、
その時――……
「美……花…?」
ずっと聞きたかった、あの声が
……聞こえた。