アッパー・ランナーズ〜Eternal Beginning〜
「だせぇな、燕」

再び、ガクンとした衝撃と共に、周りの流れ去っていく風景が制止する。

正にパペットのような体勢のまま、ぼくは宙ぶらりんに貴族連中の家の屋根を見下ろしていた。

襟が首に食い込んで痛いのみると、何かに服が引っかかって、操り人形体勢を保っているらしい。

「おっそい!まったく。危うくこの馬鹿と一緒にぺたんこのハンバーグになるところよ」

「はは、自業自得だろ、そう言うな。それに……興味深い現象も見れたしな」

ぼくと、ツバメと呼ばれたおでこ女の襟をがっちり掴んでぶら下げているのは、何やら金属のデカい塊に乗った、食い逃げ一味のあの銀髪グラサンだった。

「ま、一応礼は言っておくわ。アリガトウ、ノーフェイス」

そう言いながら殺人未遂の犯人は、ぶら下がり人形から一転、ひらりと軽やかに跳躍して金属体に飛び乗った。

これは……操る者(ライダー)特有の、スカイランか?

「おいおい、礼儀がなってねぇなぁ。そんな心の籠もってない棒読みじゃぁ、俺のこの熱いハートまで届かねえぞ?」

「冬夏と春秋もありがとうね」

『どもー!』

「無視か!」

グラサンの両肩にひょっこり現れた2人の子供は、服装こそ違うものの、それを除けば顔立ちから身長まで瓜二つだった。

それに、計ったように同時に同じ台詞、同じポーズをとる。

「ああ、それに四季もね。ありがと」

おでこ女がそう言って足元の金属塊に触れたとたんに、ぼくたちを乗せた金属のスカイランが激しく震え出し、彼女の言葉に応えるように鎌首を持ち上げて、次の瞬間には脳の最奥まで痺れるような凄まじい咆哮が、夕焼けのカルガンチュアに響き渡った。
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