(話術師外伝)『嘘つきウサギ』
 異変が起きたのはつきの日だった。


 午後三時。


「冗談でしょ・・・?」


 私は、パソコンの画面を前に、タバコをくわえたまま驚きの声を上げる。


 画面の前にあるのは、私のネットバンクの口座。


 そこに、きっかり2000万・・・アメリカドルでの入金がされていたのだ。


 ご丁寧に、日本円での計算もされている。


 総額・・・約20億円。


 とても、一昼夜で用意できる額ではない・・・。


 しかも、驚いたことに、この金額は一つの口座からではなく、私が持つ全部で357の口座、すべてに少しずつランダムに入金されていたのだ。


 もちろん、それぞれの口座につながりはない。


 名義、住所、IP、パス。


 すべてをランダムに設定してある。


 しかし・・・あろうことか、こいつはそれらすべての口座に、こちらも、名義を変え、IPを変え、当然パスを変えて、足がつかないように入金してあったのだ。




 ・・・・・・・常人のなす業ではない。


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