ワケありSMごっこ
「……江角さん?」
「っ!?」
突然背後から掛けられた声に、わたしは慌ててそちらを振り返った。
そこには、
机二つ分後ろから、心配そうにわたしを見つめるクラスメートが居た。
クラスメートの大竹くん。
目立つタイプの男の子じゃないけど、真面目で穏和な男の子。
「……大丈夫?」
わたしの頬を辿る幾筋もの涙を見たせいか、
大竹くんはゆっくりとわたしの座る席まで足を運んで、
しゃがみ込み、視線を合わせてきた。
普段、強気なSキャラで通ってるわたしとしては、
こんな弱気な姿見られたくない。
大竹くんから目を逸らし、そそくさと手のひらで涙を拭っていると、
「はいっ」
優しく微笑んで、ハンカチを差し出してくれた。
それを見たら、止まりかけていた涙が再びこみ上げてきた……。
もし、創だったら……、
「めんどくせぇ女」
とか言って、放っとかれるかもしれない。
おんなじ男の子なのに、大竹くんはこんなに優しい……。