ワケありSMごっこ
次の日の朝。



「江角さんっ?」




少し腫れた目を気にしつつも登校したわたしは、




外面用の笑顔を貼り付けた、優しい声色の創に呼び止められた。




反射的に足が一歩後ろに下がるわたしの腕を、




「ちょっと、いいかな?」




目の笑っていない満面の笑顔を浮かべて掴み、




人気の無い非常口の脇へと連れていった。





無言のままの創に、非常口の壁に追いやられ、




「……昨日、教室で何やってたんだっ? あぁん?」





物凄い無表情でわたしに迫ってくる。




なんだか複雑だ……。



散々無視してた癖に今更……。




そう思って視線を床に落として、創から逸らす。





思えば、数日ぶりだ。
創との会話。





創につけられたキスマークも、消えかけている。





このまま、わたしたちの曖昧な関係も消えちゃうんだ……って、思ってた。





「おまえ、大竹が良いのか?」




わたしの顎を右手に掴み、視線を無理矢理自分に向ける。





何時の間に見ていたのか、思いがけず出された名前に、わたしの心臓が一瞬大きく脈打った。

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