ワケありSMごっこ
何も言わずにわたしを見下ろす創。




「……わたし、戻るからっ」




そのまま創の体の脇を抜けて、立ち去ろうと踏み出したとき、




「っ!!」




背中を向けていた創に腕を掴まれ、思わずドキッとなる。





怒られる?

襲われる?




頭の中に浮かぶ嫌な想像に身構えながら、恐る恐る振り返ったわたしに、




「……行くなよ」





思いがけず、か細い声が聞こえた。





そこに居るのは紛れもなく創なのに、




わたしの手をギュッと掴み、なんだか心細そうにこっちを見てる姿はまるで別人。





いつもの自信満々な俺サマは見る影も無く、




寂しそうな瞳で立ち尽くしている姿が、まるでウサギみたい……。





呆然として創を見つめるわたしに、





「……行くな。大竹のとこにも、どこにも……」





歩み寄って抱き付いてくる創は、ちっちゃい子みたいで……なんだか可愛い。





「俺ので居て?」





わたしの左肩に顔を埋め、縋るように呟いた言葉に、





「うんっ。もちろんだよっ」





思わず創をギュッと抱き締めて、こう答えてた。

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