ワケありSMごっこ
「世莉奈、朝食の時間だ」
そして毎朝毎朝同じ時間に同じフレーズで起こすのに、彼女のまぶたがパッチリ開いた例がない。
学校では隙ひとつ見せない、みんなが注目の可憐なお嬢様は・・・・・・寝覚めが良くない。
「・・・・・・湊」
微睡んだ視線と寝起きの掠れた声が俺を呼び、世莉奈の細い腕が制服の裾をグイッと引っ張る。
反動で顔を傍に寄せれば、
「起こして」
「は?」
「起こしてって言ってるの。早く」
俺の首に素早く両腕を巻きつけた世莉奈がこう言って唇を尖らせた。
・・・・・・このわがまま娘が。
うちの家系が代々世莉奈の家に仕えているのを良いことに。
可憐なお嬢様は俺の前では、ただのわがままで人遣いの荒い傍若無人な女に豹変する。
仕方なく両手で世莉奈の体を抱き起こし、そのままベッドの縁に座らせようとした瞬間。
「っ!」
「その前に世莉奈にすることがあるでしょ」
世奈莉が首に回していた両腕にぐっと力を入れ、俺の体勢をわざとに崩させた。
とっさに腕をついた俺を間近から窺うように見つめる視線と甘ったるい声。