Baby Doll
人形のような少女
「ねえママ、お人形さんが歩いてるよ。」
母親らしき女性の服を掴み、あたしを指差して言う少女。
振り返った母親も、こちらを見てしばらく呆然とし、「こ、こら、指差さないの。」と子供の手を引いた。
もう慣れた。
東城瑠名―トウジョウ ルナ―
高校一年。15歳。
母はイギリス人と日本人のハーフで、父親はロシア人と日本人のハーフ。
異国の血が混じったあたしの顔はまるでフランス人形。
ラクダのように長い睫毛、丸くてビー玉のようなブラウンの瞳。桜色のぽってりとした唇に、雪のように白くきめ細かい肌。ゆるくウェーブのかかった背中まである髪は、金色に近い茶髪で、歩く度にフワフワと揺れる。
人は口々に「人間離れした美しさ」とか「背筋が凍る程美しい」とか言うけど
あたしはこの人形のような姿がたまらなく嫌いだ。
自分が気持ち悪くて仕方がない。