Baby Doll
第一章
5月も半ばを過ぎた季節。
この間までちらほらと残っていたピンク色も、今はすべて木から散っていた。
葉っぱだけぶら下げた桜並木はひどく滑稽に思える。
川沿いの静かな桜並木。この通学路にもだいぶ慣れた。
やっぱり、歩いて通える場所に高校があるのはいいものだ。
もうワンランク上の高校を受けてたら電車通学になるところだもの。
県内でもそれなりにレベルの高い高校に前期で合格したあたし。
頭がいいかと言われると中の上というとこだろうが、それでも内申に5ばかりついていたのは、男の先生に受けが良かったのだろう。
…この容姿が。
俯きがちに歩きながら、石を足で転がしていると、あたしの頭上の桜の木からガサガサとおかしな物音が聞こえた。
――…鳥?
そう思って顔を上げた瞬間………
「危ない!!!」