Baby Doll
改めて彼の顔を覗き込む。
まつげ、そこそこ長いな。とか
眉毛まで栗色だ、とか
そんなことを淡々と頭に浮かべては消す。
サワサワと葉が揺れる音と、川のせせらぎ、小鳥のさえずり。
シトラスの香りのする空から降ってきた少年。
そして彼を介抱する動くフランス人形。
何だかおとぎ話の世界みたい。
クスリと笑いを零すと、彼のまぶたが微かに震えた。
そしてゆっくりと目を開いて行く。
彼の茶色の大きな瞳があたしを捕らえた。
瞬間的に思った。
瞳が、泣いてる。
泣いてないのに、泣いてる。
「…誰?」
ぼうっとそう思っていると、彼の声で引き戻された。
彼はまだ意識がハッキリしないのか。
焦点が合ってないように見える。
きっとあたしの姿もぼやけて見えているのだろう。
「ねえ、誰?」
何も答えないあたしを不思議に思ったのか、もう一度聞いてくる。
「…さあ?ただの動くお人形よ。」
フワリと笑って答えると、彼はまた意識を手放した。