鋼の心








「名前はアルバート。
いつも大きな唾の帽子を被って、
マスクで口元を隠してて…
顔や瞳の色も髪の色さえ知らない。
でも…私の初恋相手だったの。」

「そいつを…まだ…」

「えぇ…想ってるわ。」

震える声で尋ねてきたダリムに…
さらっと、ルシュアは答える…。


「ルシウスには…
忘れたって言ったけど…
本当はまだ愛してるの。」

そう言ったルシュアの幸せそうな顔を…
ダリムは…複雑な気持ちで見た。


「でも……、
そんなアルバートを愛していながら
ルシウスに…恋をしてしまったの。
きっと…憎いって思っていた時…。
ううん、初めてその瞳を見た時から
恋に落ちてたわ。」


切なげに微笑むルシュア…。


ダリムは首を傾げた。








< 142 / 222 >

この作品をシェア

pagetop