鋼の心
「逃げようとしてるなら止めておけ。」
壁に寄りかかり
腕を組んだ状態で言う茶髪の男。
…ビオ。
そう呼ばれていた事を
ルシュアはふと思い出した。
「逃げるだなんて。
とんでもございませんわ。ビオ様。」
あくまで、嫌味ったらしく言うと…
ビオは茶色い瞳をルシュアに向ける。
「『死のう』とは、考えても…
『逃げよう』なんて無謀な事。
考えませんし、しません。」
無表情のままルシュアは言うと、
痣の出来た手首を摩った。
うっすらと手に血が付く…。
思わず、ため息を吐いた…。