三国志疾風録
 「押すな押すな! まだ十分にあるから心配すんじゃねー!
この劉備が大丈夫だと保障するぜ!」

 人だかりの真ん中から、威勢のいい声が聞こえてきた。
すぐに話ができそうもない状況なので、三人はしばらく木陰で様子見ている事にした。

 「オラお兄さーん! あんたさっきもいたろーが! 一人一袋だと言ったろーが。約束守れねえー奴は男として認めねーぞ!」

 劉備の怒声を聞いて関羽の頬がピクリと動いた。
 すぐにあらぬ方向を見つめて、分かっているとばかりに頷き微笑んだのを見て、張飛が嫌そうな顔をした。


 三十分以上経っても人は減るどころか増える一方で、役人らしき者達の姿まで見え始めた。

 「やばいんじゃないのか。役人に闇塩売ってるとばれたら俺達の塩が没収されちまう」

 「うむ。塩だけならよいが、あの方まで捕まってしまう。
ここは我等の出番やも知れぬな」

 関羽の言葉を聞いた簡擁がスーっと離れようとしたのを、張飛が片手で捕獲した。

 「心配すんな。あの野郎の為に役人ともめる気はない。少なくとも俺はごめんだぜ。こんな時こそ周倉って野郎に任せりゃいいんだよ。ヒュ~ドロドロドロってか」

 「周倉一人では無理だ。州兵のおでましだ」
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