三国志疾風録
 州兵二十人ばかりが全ての客を追い払い、劉備を取り囲んだ。

 一際派手な出で立ちの男が塩を一舐めして薄笑いを浮かべる。

 「通報通りだな。塩の売買は国営のみだ。ようやくお前をぶちこめるぜ」

 「あ? 私をぶちこむと言ったのか季費。この劉備が法に触れるような真似をしたと言ってるのか」

 「たった今、塩を売ってやがったろうが。法には触れぬが女の尻には触れる男李費様と、まあお前の仲だ、腰のものを譲るってんなら見逃してやらんでもないぞ」

 「はっ、またかよ。コネで買ったとはいえ州兵長が、下品な口上晒してねーで、シャンと背筋伸ばせ背筋を。残念ながら私は塩を売ってねーよ。配ってただけだ。塩を無料配布する甘い男劉備――ちっ、お前の残念な顔見てると決め台詞も決まらねーよ。一袋づつくれてやるからさっさと失せろ。早くしないと塩撒いちまうぞ」

 李費が返答に窮して固まっている間に、劉備は州兵一人一人に塩袋を手渡し、治安向上に勤しむよう声をかけた。

 受け取ると共犯になりかねないので、普通は拒否するのだが、劉備に声掛けされた州兵は上から褒美を賜る錯覚を覚えたかのように、一人の例外無く塩を受け取った。
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