ドリームビリーヴァー
「口笛吹ける?」
沙希が最初にかけてきた言葉だ。
この時、僕は校舎裏の黒い土の上に横たわっていて、そこから沙希を見上げていた。こういう時、普通の人なら沙希が女神にでも見えるんだろう。
けれど、僕には女神には到底思えなくて、もっというなら、さらにいじめに来た刺客か何かとしか思えなかった。
だっておかしいじゃないか。さっきまで三人に囲まれて顔や腹をさんざん殴られたかっこ悪い同級生にむかって、手も差し伸べずにあんなことをいうんだから。
「吹けないよ」僕は地面にむかって、いった。
「なんだ。吹けないんだ。阿彦くんって何でもできるから口笛も吹けると思ったのに」
「何でもできるなら、今こうやって地面に這いつくばっていないよ」
「はいつくばる?」
何がおかしかったのか、沙希はくすくす笑いながら、もう一度「はいつくばる」と呟いた。
「かっこ悪い感じだね」
「かっこ悪いんだよ」
「じゃあ、友達だ」
沙希が最初にかけてきた言葉だ。
この時、僕は校舎裏の黒い土の上に横たわっていて、そこから沙希を見上げていた。こういう時、普通の人なら沙希が女神にでも見えるんだろう。
けれど、僕には女神には到底思えなくて、もっというなら、さらにいじめに来た刺客か何かとしか思えなかった。
だっておかしいじゃないか。さっきまで三人に囲まれて顔や腹をさんざん殴られたかっこ悪い同級生にむかって、手も差し伸べずにあんなことをいうんだから。
「吹けないよ」僕は地面にむかって、いった。
「なんだ。吹けないんだ。阿彦くんって何でもできるから口笛も吹けると思ったのに」
「何でもできるなら、今こうやって地面に這いつくばっていないよ」
「はいつくばる?」
何がおかしかったのか、沙希はくすくす笑いながら、もう一度「はいつくばる」と呟いた。
「かっこ悪い感じだね」
「かっこ悪いんだよ」
「じゃあ、友達だ」