ドリームビリーヴァー
そんな葉山市は決して田舎ではなかった。

大手のファストフード店が数多く進出してきていたし、コンビニだって同じ名前の店舗が道の向かい側数十メートルで鎬を削り合っていたし、レジャー施設だって十分あった。

だけど、これだけあっても、都会ではなかった。都会とは比べ物にならないぐらい田舎だった。田園風景が広がっていたわけでも、牛が道路を横断していたわけでもない。少し山はあったけれど、それはお年寄りの娯楽で、僕らには関係がない。

ただ単にひどく閉鎖的だったんだ。

もちろん、土地がじゃない。そこに住んでいた知的生命体がだ。

とくに合併した後はその風潮が広がっていた。中途半端な存在のくせに、自分よりも小さな町には見栄を張って、大きな市は極力無視していた。すごくかっこ悪い街だった。

とにかく自分たちが弱く見られたくなかったんだ。そんな街で、健全な若者たちが、夢を見ろっていわれても無理な話だったわけだ。

でも、たしかにそういう余所行きの活気はあった。葉山以外の街は全部が海の底に沈んでしまったかのような活気。虚勢という言葉がピッタリな活気。

もしかしたら、当時の議会では「葉山市日本独立計画」みたいなことが真剣に議題として持ち上がっていたかもしれない。
< 3 / 16 >

この作品をシェア

pagetop