ドリームビリーヴァー
沙希はほんとに悩んでいた。

僕に言わせてもらえば、塩と味の素の違いはみりんとお酢のそれよりもずっとかけ離れている。むしろ調味料という概念しかあっていないんじゃないだろうか。こんなことをいっては語弊があるかもしれないけれど、人間のジェンダーぐらい違うと思う。つまり、明確な違いがたしかにあるってわけだ。

沙希という存在を違う言葉で置き換えるなら、きっと不思議という言葉がピッタリだと思う。

存在感がないわけでも、あるわけでもないのに、はっきりとそこにいることがわかるような、そういうオーラというか、雰囲気を持っていた。

あとで同窓会なんかをやった時に、たいして人間付き合いをしていないのに「沙希ちゃん?いやあ、久しぶりって気がしないねえ」なんていわれるタイプの人間だ。

覚えてもいない。忘れてもいない。けれど、会ってみたらすぐわかる、そういうタイプ。

たぶん、そういうギフトのような雰囲気を持っているような連中は、生きていること自体に何の疑問もないんだ。

「人間は神様が作ったんだから、生まれたことなんて全然不思議じゃないよ」なんて、平気な顔でいえるんだ。

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