Cafe Voyage
“いらっしゃい”

カウンターに腰かけた二人に、そう声を掛けると父親はゆっくりと口を開いた。

“お久しぶりです。お元気そうで何よりです、マスター”

彼の予想外のその言葉に私は動揺した。

彼はそんな私に気付いたようで、タバコをポケットから取り出しながら続けた。

“こちらに来ていたのはもう10年近く前ですから”

そう少し寂しげに笑った彼はタバコに火を着けようとしたが、少女がむくれた。

“あー、タバコやめるって言ったのにぃ”と。

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