月と太陽の事件簿4/卒業までに解く問題
ただいまと言って玄関を開けると、台所から母が顔をのぞかせた。

「あら達郎くん。どうしたの一体?」

あたしはちょっと勉強で教わりたい事があってとごまかした。

「あら、そう」

母はまったく疑おうとはしなかった。

「じゃあ達郎くん悪いけど面倒みてやって」

「わかりました」

達郎兄ちゃんはそう答えてから一拍おいて

「それにしても叔母さん、相変わらずお若いですね」

と付け加えた。

「あらやだもう達郎くんたら!」

みえみえのお世辞にまんざらでもない様子の母。

対称的に、あたしの心は白けきっていた。

お婆ちゃん、これも貴方のしつけですか?



「誰だこれ?」

達郎兄ちゃんはあたしの部屋に入るなり、壁のポスターを指さした。

「ブアカーオ・ポー・プラムックだよ」

「知らない」

「男の人なのに格闘技をみないの?」

「女の子なのに格闘技を観てるのもどうかと思うけどな」

そうかなぁ。

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