紺色の海、緋色の空
《1》

クジラの唄

1


ある朝、「彼女」から一枚の絵はがきが届いた。

裏を返すと、そこには雄大なシロナガスクジラが深い海の底を泳いでいた。

消印はカナダ
ケベックシティ――

確か、絵本に出てくるような美しい街並みで名高い観光地だ。

僕は目覚めのブリティッシュ・アールグレイをカップに注ぎ、テラスから神戸の街を見下ろした。

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