紺色の海、緋色の空
「それがすべてだよ」

僕が話を終えても、シロナはしばらく黙っていた。

「情けないだろ、僕って」

「そうかしら」

「……?」

思わぬシロナの言葉に、僕は彼女の横顔をまじまじと見つめた。

「だって変よ。結局早紀さんは自ら命を絶つことで、あなたやその男から逃げただけじゃないの。違う?」

問いただすようなシロナの言葉に、僕は再び顔を伏せた。

「でもね、どこか腑に落ちないの。あなたの話を聞いていると、とても早紀さんがそんな人には思えなくて」

「だけど……」

「だってそうじゃない。彼女一人が死んだところで、それであなたの安全が保証される訳じゃないわ」

「だから遺書を書いたんだよ」

「それでも変よ。婦女暴行だけじゃ終身刑にはならないもの。つまり、その男は今もどこかで生きている」

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