紺色の海、緋色の空
僕とシロナは、少しずつ歴史を紐解くように話す教授の後ろを歩きながら、ボーシャン・タワーの外に出た。

ロンドン塔は日本の城と良く似た多重構造になっている。

敷地の中心に庭。そしてそれを取り巻くように内郭、その外に外郭のタワーが並ぶ。敵を防ぐには、必然的にそういう構造になるのだろう。

「ここがロンドン塔の中心じゃよ」

立ち止まった教授が眼を細めた。

「綺麗な庭ね」

シロナがため息をこぼした。

なるほど、確かにそこはやや広い庭になっていて、丁寧に手入れされた芝生が観光客の目を癒していた。

「あれは?」

庭の少し端に四角い台が置かれ、その周りに観光客が集まっている。

「断頭台じゃよ」

「え?!」

「もちろんオブジェじゃがの」

教授はゆっくりと息を吐き、再びジェーンについて話し始めた。

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