紺色の海、緋色の空
新たな女王となったメアリーは、ジェーンをすぐには殺さなかった。

「ジェーンの様子は?」

メアリーが側近に訊ねると、側近は表情を曇らせた。

「日に日に衰えてございます」

「そう……」

メアリーは呟いた。

ジェーンをタワーに幽閉してから、もう半年が過ぎていた。

その間、ジェーンの義父であり、クーデターの首謀者でもあったジョン・ダンドリーを処刑した。

彼に錫杖の余地はない。

しかし、メアリーはジェーンを殺したくなかった。ジェーンの祖母にひとかたならぬ恩があったからだ。

それに、ジェーンはクーデターの道具にされただけだと言うことを、メアリーはよく分かっていた。

『ジェーンを殺したくはない』

メアリーは何度もジェーンに特赦する気持ちがあることを伝えた。

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