紺色の海、緋色の空
草原の列車、緩いカーブを曲がる
2
僕たちを乗せた列車は、ほぼ定刻どおりにキングスクロス駅を出発した。
すぐに屋根の影が途切れ、淀んだロンドン特有の空が視界に広がる。
流れ去る車輪の音を聞きながら、僕たちは中程の車両の座席を確保し、旅行鞄を荷台に押し込んだ。
座席は二人ずつが向かい合わせに座るオーソドックスなタイプで、シートには深い緑色のビロードが張られていた。
「窓、開けてもいい?」
「手伝うよ」
僕たちは互いに窓の端と端を掴み、立て付けの悪い窓を五分がかりでようやく少しだけ押し上げた。
差込む風にシロナの髪がなびく。
「静かね」
それを手で押さえながら、シロナが車内に目を向けた。
乗り合わせているのは仲の良さそうな老夫婦と、早々と居眠りを始めた初老の男性。五歳くらいの子供を連れた母親と、学生らしきカップルが一組。
時折ガタガタと列車が揺れる以外、至って車内は静かだった。
僕たちを乗せた列車は、ほぼ定刻どおりにキングスクロス駅を出発した。
すぐに屋根の影が途切れ、淀んだロンドン特有の空が視界に広がる。
流れ去る車輪の音を聞きながら、僕たちは中程の車両の座席を確保し、旅行鞄を荷台に押し込んだ。
座席は二人ずつが向かい合わせに座るオーソドックスなタイプで、シートには深い緑色のビロードが張られていた。
「窓、開けてもいい?」
「手伝うよ」
僕たちは互いに窓の端と端を掴み、立て付けの悪い窓を五分がかりでようやく少しだけ押し上げた。
差込む風にシロナの髪がなびく。
「静かね」
それを手で押さえながら、シロナが車内に目を向けた。
乗り合わせているのは仲の良さそうな老夫婦と、早々と居眠りを始めた初老の男性。五歳くらいの子供を連れた母親と、学生らしきカップルが一組。
時折ガタガタと列車が揺れる以外、至って車内は静かだった。