紺色の海、緋色の空
『IANE』

「彼女」が書き記したその文字を、僕たちはロンドン塔で見つけた。

そして、それはあの悲劇の女王レディ・ジェーン・グレイのことだと知った。

なぜジェーンなのか?

何を意図して「彼女」はそれを僕に伝えようとしたのか。

その理由は分からない。

「彼女」の口から聞かない限り、僕には一生分からないのかも知れない。

いずれにせよ、あの文字の意味が分かったところで、「彼女」の足取りが掴めたわけではなかった。

山猫教授がいなければ、そしてホテルのロビーに咲く花を見ていなければ、僕たちは「彼女」を見失っていたに違いない。

ホテルを探していたとき、あのホテルにしようと言い出したのはシロナだった。

だからといって、彼女がすべてを見通していたとは思えない。

きっとシロナは知らなかった。

ただ、やはり何かに導かれたのだ。とても強い引力に惹かれるように。

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