紺色の海、緋色の空
「誰かに撮ってもらおうよ」

案の定、シロナが僕に笑顔を向けた。

「僕はいいよ」と渋ると、シロナは僕の腕をグイグイと引っ張って、カメラを側にいたカップルに渡した。

「ほら笑顔!」

「もうちょっと楽しそうに!」

「それじゃ棒立ちじゃない」

「手はこう!足は……ああもう、今度は顔が強ばってる!!」

「今よ!今撮って下さい!!」

あれこれ僕に注文を付けるシロナは本当に楽しそうだった。

言われるままに体をギクシャクと動かす僕に最初は呆れていたカップルも、次第に一緒になって笑い出した。

僕も笑った。

こんなに笑ったのは久しぶりだった。

それから僕たちは、シャンブルズ通りを街の外れに向かって歩いた。

僕の腕にもたれ掛かるシロナの横顔に、僕はいつしか早紀の面影を重ねていた。

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