紺色の海、緋色の空
誰かの声が聞こえる。

ひやりと冴えたヨークの風が頬を伝う。


「……大丈夫?」

蹲った僕の背中をさすりながら、シロナが心配そうに顔を覗き込んだ。

「ああ」と僕は答えた。

「でも」

「心配ないよ。もう……」

僕は言いかけた言葉を飲み込み、額に浮いた汗を拭った。

あれは何だったのか?

何故あの男は倒れていたのか?

男は、死んだのか?

僕は激しく首を振った。

違う。

男は捕まったのだ。

部屋で首を吊って自殺した早紀が残した遺書によって……

なのに何故?

僕は激しく混乱した。

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