紺色の海、緋色の空
山猫教授との約束どおり、最後に僕はレストランに鍵を掛け、夜空いっぱいに散らばった星屑を見上げた。

はくちょう座が大きく羽を広げ、天の川を渡っていった。

早紀のことを思い出した。

ずんと響く胸の痛みは、まだそう簡単に消えることはなかった。

けれど、それでいいと思った。

いつか早紀は僕の中で、顔さえ朧気な存在へと変わっていくのだろう。

声だって忘れるに違いない。

それでいい。

その時が来ることを、僕はもうけして畏れはしない。

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