紺色の海、緋色の空
鳥居の彼方に飛行機雲が見えた。

雲は一筋の軌跡を残し、金色の空へと溶けて消えた。

早紀のことを思い出す。

この神社でたくさん話をした。いっぱい笑って、キスをして、とろけるようなセックスをした。

「大好きだったよ」

今でも。これからもずっと。

でも僕はもう留まらない。早紀の思い出とともに歩き出すと決めたから。人を愛すると言うことを、シロナが思い出させてくれたから。


二つ目の小石を拾おうと屈んだとき、もう一つの影が僕の影に重なった。

「何してるの?」と背中から声がした。

「石投げ」と僕は答えた。

「楽しい?」

「まあね」

「私もやってみようかな」

影がフワリと揺れた。

僕はその影を引き寄せ、思い切り強く抱きしめた。

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