紺色の海、緋色の空
「私……」

言いかけたシロナの唇をキスで塞ぎ、彼女の細い肩を砕けるほど握りしめた。

「おかえり」と僕は言った。

「ただいま」

と照れくさそうにシロナが笑った。

今まで僕は、心のどこかでシロナに早紀の姿を重ねていた。

早紀の背中をずっと追いかけていた。

だけど今は違う。

はっきりそう言い切れる。

この先、僕たちにどんな未来が待っているのかなんて誰にも分からない。

たとえ有限であるとしても、今の時間を精一杯大切に生きればいい。

楽しいときには笑えばいい。

哀しいときには、二人で一緒に乗り越えていけばいい。

僕はもう立ち止まらない。

明日の道は、明日探せばいい。

動き出した僕のコンパスが、僕にそう教えてくれた。

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