紺色の海、緋色の空
「彼女を探そうとする理由は?」と訊ねてみると、シロナはそれにも首を振った。

「敢えて言うなら本能かしら」

「本能」

「そうよ。誰だって自分の母親が誰なのか、知りたいと思うでしょ」

それと同じよ、と言って、シロナはくすりと笑った。

そしてこうも言った。

「星空レストランって知ってる?」

「知らない」と僕は答えた。

本当に知らなかった。見たこともなければ、噂ですら聞いたこともなかった。

「どこかの森の奥にある、動物たちの西洋料理店よ」とシロナは言った。

その表情が、どこか楽しげに見えた。

「動物?」

「そうよ。私だけじゃない、他にもたくさんの客がいるわ」

「例えば?」

「羊、鶏、もぐらに山猫……」

「バクも?」

「もちろん」

シロナは二口目の紅茶をコクンと喉を鳴らして飲み干した。

僕はこめかみを指で押さえ、ため息とともに首を振った。

紛れもなく、それは皆「彼女」が送ってきた絵はがきの動物たちだった。

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