紺色の海、緋色の空
僕は最初、ケベックシティに向かうつもりだった。「彼女」が最後に絵はがきを寄こした場所だからだ。

雲を掴むような、とはよく言ったもので、僕にはそれ以外に何の手掛かりも持ち合わせていなかった。

だけど、「そこには居ないわ」とシロナは首を振った。実にはっきりと。

「じゃあどこに?」

と僕が眉を寄せると、今度は力なく首を横に振った。

彼女は全知全能ではない。むしろ知らないことの方がはるかに多いようだった。

それでも僕はシロナの助言どおり、カナダ行きを思いとどまった。


――ロンドンへ。

それが僕達の答えだった。

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