紺色の海、緋色の空
僕は機内に持ち込んだ鞄から、イギリスについて書かれた旅雑誌を数冊引っ張り出し、頭から一ページずつ読んだ。

それに飽きると、今度は古本屋で購入した夏目漱石の『倫敦塔』と、コナン・ドイルの短編を二編だけ読んだ。

それでもまだ到着の時間には八時間近くもあった。


途中で機内食が出た。

隣でシロナが興味津々の様子で身を乗り出してきた。

「fish or beef?」

とキャビンアテンダントがにこやかな笑顔で僕に訊ねた。

「beef, please」

と僕は答えた。

シロナは迷わず「fish!」と言った。

< 50 / 239 >

この作品をシェア

pagetop