紺色の海、緋色の空
あの頃、僕たちは高校生だった。

僕たちはまだ子供で、世間を知らなくて、何をしても許される、誰かが護ってくれると心のどこかで考えていた。

いや、もしかしたらそう思っていたのは僕だけで、早紀はとっくに気づいていたのかも知れない。

だから、僕を護ろうとした。

「心配しないで」と微笑んで、僕に優しくキスをした。

「僕が早紀を護るから」

と僕が言うと、早紀は本当に嬉しそうに笑ってくれた。

それは、早紀が最後に見せた精一杯の笑顔だった。

僕はそれすら気づけなかった。

早紀の決意を、痛みを、その先に見ていた何かを、ついに最後まで気づいてあげることができなかった。

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