紺色の海、緋色の空
着いた先は広場だった。

「ほらね」と僕が少し自慢げに言うと、シロナはエロスの像よりもはるかに高くそびえ立つネルソン提督の銅像を見上げ、たった一言「うん」と呟いた。

そこはまるで映画などにに出てくる宮殿の前に広がる大きな庭のようだった。

宮殿のそれと違うのは、足元が石張りであることと、広場の周りを無数の人と車が囲んでいることくらいだろうか。

とは言え、ひとたび広場に足を踏み入れてしまえば、周りの喧噪も不思議と気にはならなかった。

「暑い!」

シロナはにわかに顔を出した太陽を手で遮り、木陰のベンチに倒れ込んだ。

その隣りに腰掛けた僕は、ちょうど正面にそびえるネルソン提督の記念碑を、ぼんやりと見上げた。

十メートル。

いや、もっとあるだろうか。

珍しく真っ青に晴れたロンドンの空にしゃんと背を伸ばしたその塔は、何だかとても誇らしげに見えた。

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