紺色の海、緋色の空
「トラ……かしら?」

不意にシロナが言った。

記念碑の少し横にトラかライオンらしき大きな石像があって、その周りを噴水が勢いよく流れていた。

「トラファルガー広場だから?」

「なにそれ?」

「この広場の名称。ほら、そこの案内に書いてある」

「ふーん」

シロナは鉄製の洒落た案内版を一瞥し、またも興味なさそうに首を傾げた。

それから僕たちは何を話すでもなく、周りの景色をぼんやりと眺めた。

噴水で子供が水浴びをしていた。

中には裸の子供もいた。

向こうのベンチでは、少女がハトに餌をばらまいていた。

そう言えば、この広場にはやたらと沢山のハトがいるようだった。

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