紺色の海、緋色の空
もちろん、この気のいいマスターは怒ってなどいなかった。

それどころか、さも誇らしげにギャラリーやベルサイユ宮殿の説明をたっぷり三十分もかけて話してくれた。

どうにもこの街には話し好きで世話焼きな人が多いようだ。

「あそこには西洋の名画が幾つも展示されていてね、全部見て回るにはとてもじゃないが一日じゃ足りないだろうよ」

「そんなに?」

「ああ。特にルネッサンス期の作品数は群を抜いているよ。ルーブルやオルセーにだって負けないほどにね」

「へぇ、すごい!」

「それに中にはショップもある」

「絵を売ってるの?」

「もちろんレプリカさ。でもいろんなグッズがあるから覗いてみるといい。お嬢ちゃん可愛いから安くしてくれるかもな」

「本当?!」

「ああ。ただし女の店員はダメだぜ」

マスターは笑顔でウインクし、説明の最後を締めくくった。

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