紺色の海、緋色の空
マスターの話に身を乗り出して聞き入っているシロナの姿に、いつしか僕は早紀の面影を重ねていた。

『付き合って!』

『どこに?』

『今大丸でモネ展をやってるのよ』

そう言って瞳を輝かせる早紀に何度腕を引っ張られたことか。

とにかく彼女は絵が好きだった。

特にドガやモネ、ゴッホといった印象派画家たちに深い憧憬を抱いていた。

図鑑のような本を持っていたし、専門誌も何度か買っているのを見たことがある。

使えもしないくせに、いろんな画材を部屋中に飾っては、画家になった気分を味わったりもしていた。

シロナの横顔は、そんな早紀ととても良く似ているような気がした。

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