紺色の海、緋色の空

レディ・ジェーン・グレイ

3


「1537年、ジェーンはロンドンの北、レスター州ブレイドゲ-トで生まれた」

山猫教授は自慢の髭を中指で弾き、神妙な顔つきで話し始めた。

「ジェーンの母は時の国王ヘンリー八世の妹でな、ジェーンはそんなグレイ家の長女としてこの世に生を受けたんじゃ」

「つまり、ジェーンは国王の……」

「姪じゃな」

山猫教授は頷いた。

「そんな人がどうして」

シロナは目の前の絵画を見上げ、不思議そうに眉を寄せた。

「確かにジェーンは超がつく良血のサラブレッドじゃった。しかしの、その血こそがすべての悲劇の始まりとなったのじゃよ」

山猫教授はシロナの隣に立ち、処刑台の前に跪くジェーンの姿を悲しげに見上げた。

「順を追って話そうかの」

ガランとした展示室の中に、山猫教授のしゃがれた声が響いた。

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