恋のSEASON
「ねぇ、何か用事?」



ニコニコしてる冬矢先輩。
でも、その笑顔が怖いよ。




「あ、いえ・・・浅塚眞妃琉が調子にのらないように忠告してあげようと思ったんです。そのほうが冬矢さんたちにも迷惑にならないかと・・・。」



言い訳じみた言葉を並べるボスの佐藤さん。目は泳いでるし、そんなの嘘だと誰もがわかる。



「ブス。」



夏樹くんが言った。
吐き捨てるように、バカにしたような口調。そして、私の手を握ってくれた。





「そっか・・・。僕たちのこと考えてくれてたんだ。でもさ、それってすごく迷惑だよ。」



依然、ニコニコ顔の冬矢先輩。
でも、怒りに満ちているのがわかる。声が違うもん。心がないっていうか・・・うまく言えないけど。





「マヒルちゃんに余計なことされるのが一番迷惑。君たちは、僕たちがマヒルちゃんを取り合いっこするのを指をくわえてうらやましいがっていればいいんだ。」



ニコニコしながら、キツいことを言う冬矢先輩。マジで怖い。初めて見た・・・怒ってる冬矢先輩。私が知ってる冬矢先輩はみんなに優しい、紳士みたいな人なのに。ちょっと変なところはあるけど・・・。



冬矢先輩に夏樹くんが握っているのとは逆の手を握られた。うわ、なんか恥ずかしい!





「じゃあ。」



冬矢先輩はそう言って、その場を離れた。歩いている間も私の両手は握られたまま。



チラリと夏樹くんを見たら、ニコッてしてくれた。私もつられてニコッてなった。








たどり着いたのは食堂。






「眞妃琉!」





食堂に入ったら、比奈子ちゃんが私のもとへとんできた。

握られていた手が自然と離れる。でも、冬矢先輩も夏樹くんもそばに立っていてくれた。






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