only one
懐かしい温室。
父と母が生きていた子供の頃一緒に過ごした楽しかった場所。
母の大切に育てた花はもうないけれど幸せな時間を過ごした空間は今も私を暖かく迎えてくれる。
温室のテーブルセットに腰をかけ父と母に思いを馳せた。
人形のように心を失ったなんて嘘。
だって瞳を閉じると私は父と母に逢えるのよ。
ただ現実に存在しない父と母に縋るように生きていても仕方ないと諦めただけ。
生きるために幸せだった子供の頃を思い出し、それを糧にするのをやめただけ。
何度も死にたいって思った。
でもそう思うことが父や母を私も否定することになるだと思い直した。
人間は生きているからこそ輝いている。
そしてその輝きは生きることに一生懸命な人間から放たれる光。
難しくてよく解らなかった両親の言葉。
今はその意味が少しはわかる大人になった。
今の私はきっと輝いてなどいない。
それでもいつか輝きたいと生きることを諦めることは出来ないんだ。