only one
「遥夢様…。」
温室の中に響いた小さな声。
ひとりになった私の名変わらずを優しい響きで呼んでくれた唯一の人。
「仲村さん?」
「お元気そうで…」
潤んだ瞳。
今にも零れ落ちそうな涙。
まだ私のために暖かい涙を流してくれる人がいるんだね。
私の涙はとっくに枯れてしまったんだ。
心さえ枯らそうとしている私。
そんな私にまだ暖かい眼差しを向けてくれる仲村さん。
孤独な私の大きな支えとなってくれた人。
「魁夢に見られたら仲村さんただじゃすまないわ。どうして?どうしてここにいるの?」
荒れ果てた温室は私達を隠してくれる。
温室の中の植物はスクスクと成長し、光さえ遮るほどになっていた。
でも魁夢が来ないという保証はない。
見つかったら…